ガルウイングタイプの車をまとめてみました

ガルウイングタイプの車をまとめてみました

ガルウイングタイプの車をまとめてみました

自動車メーカーはこれまで、様々なタイプのドアを車体に取り入れてきました。いくつか種類があるうちの一つが「ガルウイング」です。元々英語で「カモメの翼」を意味しており、その名の通り、カモメが翼を広げた時のように、車体上部に向かって開閉する姿が特徴的です。

一般的な自動車に採用されているのは左右外側に向かって開くヒンジ式ドアか、横にスライドして開閉するスライドドアですが、ガルウイングドアはそれらとは違い、上に開く非常に個性的なドアといえます。ガルウイングドアの他にも個性的なドアは多数ありますが、今回はガルウイングドアに焦点を当て、その代表車種をご紹介したいと思います。

■ガルウイングドアの特徴

前述したとおり、カモメが翼を広げたようなシルエットがガルウイングドアの特徴です。今まで数多くの自動車メーカーがこのドア構造を取り入れており、ガルウイングドアはその車の個性を表現するだけでなく、実はモーターレース向けの効率の良い設計として取り入れられたのが始まりです。

このドアを世界で最初に導入した車種はダイムラー社のブランド・メルセデス・ベンツとされています。レース車を手がけていた開発チームは当事、設計に伴う乗降性の悪さに頭を抱えていました。ドア開口部に太く設計した敷居部分(サイドシル)と、走行性を向上させるためのワイド&ロー設計を採用しているレーシングカーでは、横開きドアだと大きく跨いで乗降りする必要性があったからです。そこで実用性を考えて開発されたのがガルウイングドアでした。当事、他に類を見ない縦開きのガルウイングドアはレース参戦時にクレームを受けたといいますが、チームの監督であるアルフレート・ノイバウアー氏は「レーシングカーのドアが横開きに限るとは、規定のどこにも書いていない」と主張を通したといいます。1952年に参戦したル・マン耐久レースではその開口部分をさらに広げ、今の形となったといいます。

そしてレースで取り入れられた技術を市販車にも継承し、今日の形に至っているのです。

■ガルウイングドアタイプの車種を一挙公開!

カモメの翼のようなドア、とは一体どんな開き方で、どんな車種があるのでしょうか。イメージがしやすいよう、以下にガルウイングタイプの車種を一挙ご紹介いたします。

メルセデス・ベンツ・300SL

ガルウイングドアを世界で初めて取り入れた車種として知られているベンツ・300SL。

「SL」は軽量スポーツカーを意味するドイツ語「Sport Leicht」を由来としており、走行性を重視した低重心ボディが採用されていました。元々はベンツのモーターレース・ワークスチームがレース用のプロトタイプとして開発を進めた車種で、レースの際の乗降性を考慮して縦開きのガルウイングドアが開発されました。過去に類を見ない奇抜な形のドアに、当事は批判も集まったといいますが、ベンツチームの監督はこれを一蹴しました。承認を受けてレースに出場することとなり、人々はその近未来的な風貌の車体に釘付けとなりました。そしてベンツ・300SLは当事世界一過酷といわれていた「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」レースにおいて優勝することとなります。この輝かしい戦績によってその名を一躍世界に発進したベンツ・300SLですが、それと同時に、ガルウイングドアの知名度も向上していくこととなったのです。

当事市販の予定はなかったといいますが、スポーツカー愛好家達に強烈なインパクトを残したベンツ・300SLは、ニューヨークで高級輸入車インポーターを経営するマックス・ホフマンの目に留まり、1,000台の確定注文を持ってダイムラー社を説得するといった形で製品化に至ったといいます。そして1954年にニューヨーク国際オートショーで「公道版レーシングカー」として発表されることとなったのです。発売当初の販売価格は当事の価格で6,820ドルと高額であったのにも関わらず、大変な人気を博したといいます。

しかしガルウイングドアに関しては賛否両論で、特にスカートやヒールを履く女性をエスコートする富裕層からは批判の声が相次ぎました。そのため、クーペ型以降に発売されたロードスター型からは、日常使いを考慮して一般的なドアの開閉方向・形状を採用することとなりました。

メルセデス・ベンツ・SLS AMG

2009年9月、ダイムラー社は新型「ベンツ・SLS AMG」をフランクフルトモーターショーで発表しました。前述した名車・ベンツ・300SLを最新技術で現代に蘇らせた車種として注目を集めました。ベンツの高性能レーシングカーを手がけるAMG社がデザインからメカニズムまでを一貫して開発し、ベンツ・300SLの特徴でもあるガルウイングドアの採用も行っています。ガルウイングドアは70度の角度で上方に移動し、当事のベンツ・300SLファンを大きく沸かせました。

欧州で発売をし、ドイツでの価格は177,310ユーロ(日本円で約2,380円)としています。

テスラ・モデルX

米国注目のベンチャー企業であるテスラが開発した電気自動車・モデルXには、「ファルコンウィングドア」と称したガルウイングドアを採用しています。革新的なデザインもさることながら、狭いスペースでも気にせずに駐車し、乗降りを可能とするためにガルウイングドアを採用したとされています。特に2列目、3列目へのアクセスは抜群で、大きく開閉するドアでストレスのない乗降性を確保しています。

ドアは上に上がった後に、周囲の邪魔にならないよう横に開閉する仕組みとなっているため、前後どの方向からも乗り込むことが可能です。ルーフトップからかなり離れた位置までドアを持ち上げるため、屈んだり頭をドアにぶつける心配はありません。

マツダ・オートザムAZ-1

1992年にマツダから発売されているガルウイングを有するモデルがマツダ・オートザムAZ-1です。超小型でありながらスポーツカーとしての走行性能を如何なく発揮し、本格的なスポーツカーとして愛好家達から親しまれました。

軽自動車では唯一のガルウイングドアの採用となっており、1989年に東京モーターショーで参考出品されていた当初から注目を集めていました。開発当初ガルウイングドアは賛否両論であり、横転した際にドアを叩き割る必要があり、実質脱出不可能であるとの指摘を受けて不採用案も出ていました。しかし横転時からも脱出可能とする資料を提出し、承認を得て製品化に進みました。

ボディタイプは2ドアクーペのみとし、スズキにOEM提供をして「CARA(キャラ)」としても販売していました。製品化した後の評価ですが、サイドシル(敷居部分)がシートの厚みよりも高かったこともあり、ミニスカートの女性が乗るには不便であったりと、ガルウイングドアへの評判はあまり良いものではありませんでした。

乗降性・実用性が比較的低く、販売価格が高額であったことからも、発売以降売れ行きが伸び悩んだマツダ・オートザムAZ-1。発売してからわずか3年の1995年にその歴史に幕を閉じています。

パガーニ・ウアイラ

イタリアのパガーニ・アウトモビリから2011年に発売されたスーパーカーがパガーニ・ウアイラです。同じく同社のスーパーカーであるパガーニ・ゾンダの後継車種としてクーペモデルを100台のみの限定生産で誕生しています。先代車のゾンダとは異なり、ドア部分にガルウイングドアを採用しており、その先進的なデザインが注目を集めました。

あらゆる限定生産モデルを発売し、中国伝統の生き物をボディ部分にあしらった中国市場限定3台モデル・ウアイラ・ディナスティアや、専用のエアロパーツやサスペンション、ホイールが装備されたウアイラ・パチェットテンペスタ、クーペ同様に100台限定で開発されたウアイラ・ロードスターなどが挙げられます。ちなみにロードスターではルーフ部分が着脱式となったため、ガルウイングドアではなく、先代車種・ゾンダ同様に横開きヒンジ式ドアへと変更になりました。

デロリアン・DMC-12

映画・バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズで一躍脚光を浴びた車種がデロリアン・DMC-12です。DMC-12はデロリアンが唯一開発した車種としても知られており、1981年に長い開発期間を経て世に送り出されました。

ガルウイングドアを開いた姿は近未来的で、その先進性が評価され、映画へも起用されることとなりました。販売期間はわずか約1年であり、その間にも純金仕様車が開発されるなど、開発者達の遊び心が見受けられました。

累計販売台数は8,083台といわれています。

■まとめ

元々はレース仕様車の乗降性を向上させるために開発したガルウイングドアタイプ。メルセデス・ベンツ・300SLの発売以降、様々なメーカーがその開発を手がけることとなりますが、継続して大衆車に取り入れられることはあまりありませんでした。乗降性に関しても賛否両論の声があり、あくまでもレースシーンで活躍するドアタイプなのか、それとも今後の未来を担う鍵と成り得るのか、など様々な意見が挙がっています。

しかしドアを開いたその姿は人々の注目を引くことが必至で、先進技術が発展した今日においても目新しく感じます。そのスタイリッシュで革新的なデザインは、今後も注目され続けるといえるでしょう。
現に、アメリカのベンチャー企業・テスラが手がける最新車種・モデルXにもガルウイングドアが取り入れられており、電気自動車の発展はもちろん、ガルウイングドアなどの個性的なボディ形態が民衆に受け入れられるのかどうかにも注目が集まっているといえます。

モーターレースから始まったガルウイングドアの歴史は、その特徴的な外観で人々を魅了し、今後も継続していくことでしょう。